ウサギノネドコ図鑑 2 ヒメジョウゴゴケ
写真中央にある小さなこの「ヒメジョウゴゴケ」。「コケ」と名は付きますが苔ではございません。
ましてやコケにするなんてもってのほかです。
この物体は「地衣類」という一風かわった生き物たち。
それは一体なんなのかと端的に申しますと「菌と藻類の共生体」です。
「そんなもん見たこともない」とおっしゃるあなた。いえいえ、そんなことはないはずです。
湿っぽいコンクリートや街路樹などにこびりついている黄色や薄緑色のアレが地衣類です。
「共生体」というだけあって、菌と藻類が2つで1つのカタチになって「地衣体」を構成しています。簡単に言えば菌糸で出来たスポンジの様な構造体の隙間に、藻類がつまっているようなイメージです。
見た目は地味ですがユニークなポイントがたくさんあります。
例えばクマムシ。地上最強とうたわれるある種のクマムシは「ウメノキゴケ」という地衣類に生息しています。
さらに、ウメノキゴケを含む幾つかの地衣類は大気汚染の指標にもなります。
というわけで誠に遺憾ながら、ダーティな街中ではクリーンな空気を好むウメノキゴケを見る機会はそうそうありません。
そして誰もが小中学校の頃理科の実験でお世話になったであろう「リトマス試験紙」。
水に濡れると赤くなったり青くなったりするご機嫌なあの紙片は、ある種の地衣類から取れる染料を染み込ませて作られています。
その他にも食べられるものもあれば、煎じ薬として利用する地域もあったり、時には好奇心旺盛な研究者にタバコにされたり。案外色々と利用されています。
さて、今回のメイン地衣類は「ヒメジョウゴゴケ」です。
地衣類は地球上で2万種、日本で1000種程度がいるそうですがその中でも割と可愛らしい形をしているのがこの種で、パッと見でそれだとわかる特徴的な形状をしています。
口の狭い入れ物に液体などを入れる時に使うジョウゴ(=漏斗)にそっくりですね。このぴょっこり立っている「ジョウゴ」の部分はこの地衣体における「子柄(しへい)」という部分で、子孫を残すための器官です。基本的な葉にあたる部分はこのジョウゴの下にあるヒラヒラです。電波を捉えるパラボラアンテナのようにも見えますが特に何も受信していないようです。菌がこのような造形を作っていると考えると実に興味深いですね。
この種の地衣類は大気汚染には強いそうで、実際にウサギノネドコのお庭の所々にひっそり生えているのを見ることができます。
トタテグモの巣。
わかりにくいですがフタの裏側は糸で裏打ちしてあります。
余談ですがこちらはウサギノネドコ屈指の奥手系地下アイドル、
トタテグモの巣穴。ちょっとつつくと巣穴の蓋を内側から引っ張って開かないようにしちゃうもんで、まだその御姿を目にしたスタッフは居ないというなかなかの引っ込み思案ちゃんです。(最近はお留守な事が多いのでもしかしたら召されたのかもしれません)
ご来店された際はお気軽にスタッフに声をかけてくださいませ。お庭もご案内いたします。
ミセスタッフ
aoyama