インタビュー/ウサギノネドコ代表・吉村紘一の標本箱
公園で拾った木の実や、浜辺で拾った貝殻、キラキラ光る鉱物…。
ウサギノネドコでは今年、大切な宝物を入れるのにぴったりな、木製標本箱を発売しました。
1マスの内寸は、縦横高さ52mm。
程よい深さがあるので、立てかけてご使用いただくことも可能です。
厚みのある木の実や鉱物も、きれいに収まります。
■標本箱 – 4,980円(税抜)
サイズ: W233mm x D178mm x H64mm
素材: アガチス材(オイルステイン塗装)、ガラス、真鍮金具
重さ: 435g
皆さまこんにちは。
こちらの標本箱の企画・制作を担当しました、ウサギノネドコの高橋です。
本日はこちらの標本箱を、実際にコレクションボックスとして使ってみた方のお話をご紹介します。
まず話を聞いたのは、弊社代表・クリエイティブディレクターの吉村紘一です。
吉村は植物の美しさをアクリルキューブに閉じ込めたSola cubeの企画プロデュースをはじめ、自然の造形物を用いた様々な商品開発などをしています。
プライベートでも様々な「造形物」のコレクションを楽しんでいるようですが、普段は一体どんなものを収集しているのでしょうか?
さっそく話を聞いてみました。
# ウサギノネドコ代表・吉村紘一の標本箱
– お仕事では自然の造形物を扱っているということで、自然物の標本が多いのかな、と思いましたが、そんなこともないみたいですね。
何かコレクションをする時のポイントなどはありますか?
吉村: 人が作った、いわゆる「アート作品」というものはそれほど多くは持って無いです。
人工物でも自然物でも、余分なものを削ぎ落とした「作為のない造形美」や、
機能を追求した結果の「機能美」にグッとくるので、そうしたものがコレクションの中心ですね。
仕事では「自然の造形美」をテーマにしているので自然のものが中心になりますが、個人のコレクションとしては人工物も多くあります。
# 作為のない造形美
– 作為のない造形美とは具体的にどんなものでしょう?
吉村: 例えばこれとか…。
吉村: これはアクリル樹脂の産業廃棄物でいわばゴミなんです。
アクリル板を作るとき機械で樹脂を押し出して作るんですが、
押し出し始めはアクリルの中に気泡ができてしまうので、最初に出てきた部分は捨てられてしまいます。
その捨てられた部分がまさにこれなんですよ。
誰も意図して作った訳ではないけど、気になる造形ですよね。
– 確かに面白い形ですね。
吉村: あとはこういうものとか。
吉村: これも銅の鋳造の過程で、溶けた銅が型からこぼれ落ちてできた固まったものです。
完全な自然物じゃないけど完全な人工物でもない、誰の意図も反映してないけど、
結果残った形に不思議な魅力を感じます。
– なるほど、作為のない造形美ですね。
吉村: それからこれは人工水晶。
– これは知らない方からすると、ガラスをカットして作ったもののように見えてしまいますよね。
吉村: そうそう。カットして作ったように見えるけど、この形に結晶した結果なんです。
この形にする前に種結晶と呼ばれる小さな芯があって、それを石英が溶けた液体の中に浸して、
熱と圧力をかけてその芯の周りに溶けた石英を結晶させていくんですよ。
人がカットした訳ではないけど、そのように見えるという点にも魅力を感じますよね。
– 自然が作る人工的な形と言えるかもしれませんね。
# 機能を追求した結果の機能美
吉村: あとはやはり幾何学的なものにも惹かれますね。
吉村: これは無印良品のツボ押しボールです。
飾ることを目的にしていないものなんだけど、ツボ押しとしての機能を追求した結果、
コロンとして可愛くて、モノとして愛でたくなる造形になっているなと。
吉村: こっちはウサギノネドコの取引先でもある、ニューヨークのMoMA(ニューヨーク近代美術館)のショップで買ったパズルです。
まだ僕が会社員だったころ、出張でニューヨークへ行ったときに買いました。
先日MoMAのバイヤーがウサギノネドコにいらっしゃって、
「これMoMAで買ったんですよ」と言ったら、「そうよね」という話になって。
今はMoMAでも売っていなくて、なかなか手に入らないコレクターズアイテムになってるそうです。
– へぇ!そうなんですね。
こちらのパズルやツボ押しは、先ほどのアクリルや銅の塊に比べると、幾何学的な立体でありながら、どう使うか目的があるものですよね。
吉村: そうですねぇ。使用目的はあるけど、表現として限りなく削ぎ落としているところに魅力を感じるのかもしれません。「〇〇さんが作りました」という感じがあまり無い点に惹かれます。
– なるほど。
吉村: MoMA繋がりでいうと、こういうベアリングとか。
昔マシンアートという展示があって…。
– マシンアート?
マシンアートは、1934年にMoMAで行われた展覧会なんですけど、工業製品の造形美をテーマにしていて、
プロペラとか、大型のベアリングとかが展示されたんです。
今でこそ機能美とか機械造形の美しさは共有されてきて、工場萌えなどもありますよね。
でも当時そういったものに美を見出して、アートとして展示するのは画期的で、衝撃の展覧会だったようです。
ベアリングとかプロペラって美しいよなぁ、と普段から僕も思うので、
その当時もしニューヨークに生まれていたら、毎日のように通っただろうなと思います(笑)。
自然物もそうですが、機能を追求したものって美しいですよね。
– 確かにそうですね。
Sola cubeも、子孫を残して生き抜くために進化した、植物の機能的な形の美しさがコンセプトでしたよね。
吉村: まさにそうですね、そこを伝えたいと思いSola cubeは作りました。
– 自然・人工に関わらず、削ぎ落とされた機能美に惹かれるんですね。
# モノの感触とフォーマット
吉村: これはどこかで拾った石。軽石かな。
– ミセにも吉村さんの個人コレクションが一部展示されていますが、
こういう丸くてテクスチャが面白いものもよく集めてらっしゃいますよね。
吉村: 何というか、ただの球とか手に持って握りたくなる感じのものは、結構集めたくなります。
何かこう、肌や触覚を通して呼び覚まされるものがあるというか…。
物体の持つ触発力のようなものが、モノを買ったり拾ったりするときの判断基準ですね。
(コレクションを手に取りながら) これもそうだし、これもこれもこう…手にとって握りたくなります。
– 家でコレクションを楽しむときは、ただ眺めるよりも、触って眺めるという感じですか?
吉村: 触ることと眺めることはセットですね。
手にとってモノを見ながらお酒を楽しんだりもします(笑)。
その他吉村さんのコレクション
左上: モミジバフウの実を球体のアクリルに封入したもの。放射状とか球体のものに魅力を感じます。
中上: いきもにあで買ったクマバチの作品。この中で言うと一番作家性がありますね。銅板から作っていらっしゃるようです。
右上: もらい物のクルミです。詳細は不明です。
左下: 産業廃棄物で、何かのパーツだった銅の塊です。持った時の重量感もたまりません。
中下: 知り合いの飲食店の人に譲ってもらったスッポンの頭骨。スッポンに限らずカメの頭骨はカッコイイです。
右下: 錫製のクルミ。多分、本物から型を取っているんだと思います。富山県高岡市で買いました。
– 吉村さんのコレクションを見ていると、サイズ感も大事な要素のように思いますが、いかがですか?
吉村: ああ、そうですね。
以前、和菓子作家・御菓子丸の杉山早陽子さんが「5cm以内のものを表現する」というようなことをおっしゃってたんですが、それは感覚として分かるなと。
– ああ、なるほど。
吉村: Sola cubeもそうですが、一つのフォーマット(型)に入れることで出て来る魅力がありますよね。
全然違う異質なものを同じフォーマットに入れて並べることで、個々の魅力が際立つのと同時に、
同列に楽しめるようになるなと。
この標本箱は1つのマスが52mmの内寸になっているけど、そこに収まるものだけを集めるというのは、
コレクションをはじめるコンセプトとして面白いんじゃないかなと思います。
– 確かに面白そうですね。
今回のお話で独自の視点をうかがい知ることができたように思います。
本日はありがとうございました。
今回のインタビューで使用した標本箱は、ウサギノネドコ ミセとオンラインストアで販売しています。
自分だけの「好き」を集めたコレクションを作ってみませんか?
■標本箱 – 4,980円(税抜)
http://usaginonedoko.shop-pro.jp/?pid=118335977
■標本箱発売のお知らせ
http://usaginonedoko.net/info/?id=1686
■ウサギノネドコ オンラインストア
http://usaginonedoko.shop-pro.jp/
■ウサギノネドコ京都店 アクセス
http://usaginonedoko.net/kyoto/access/